
なぜマルシン製品は「ロマン枠」なのか?
今や日本を代表するエアソフトガンメーカーのひとつ、マルシン工業。
もともとは金属鋳造を本業とし、コクサイや中田商店の下請けを経て、現在では主にガスガン・モデルガン・戦闘機模型の製造・販売を行っています。
数多くのメーカーが現れては撤退してきたトイガン業界の歴史の中においては、現在に至るまで生き残っているという事実だけでも驚嘆に値します。
では、その生存戦略とは何だったのか? マルシン工業の魅力とは?
それは独自のロマン機構…他のメーカーと棲み分けられた、独特のメカニズムを持つモデルの数々にありました。今回はそんな愛すべき名銃(+迷銃)たちを振り返りながら、その魅力に迫っていきます。
お座敷シューター歓喜の「ライブカート式ガスガン」
実銃のように薬莢(カートリッジ)にBB弾を込め、発射と同時にガス圧で空薬莢が勢いよく弾き出される機構です。
サバゲーでの実用性(薬莢を紛失するリスクなど)よりも、モデルガンのような「動作のリアルさ・ロマン」を極限まで追求したシステムで、かつては「ガスオペレーション」、その後「DUAL MAXI(デュアルマキシ)」としてシリーズが登場していました。
ライブカートのガスガンというアイデアは普遍的であり、それ自体は他のメーカーの製品も存在します。ですが、そうした製品の多くはリボルバーや長物ライフル類。
マルシンの製品で特殊なポイントは、オートマチックの拳銃型のモデルでライブカート動作を実現していたことです。
業界全体の歴史を見てもそこまでやっている製品は少数派で、まさしくロマン枠の筆頭。ここからは実際の商品の紹介をまじえて振り返ってみましょう。
①コルトガバメント MKIV Cal’45 ガスオペレーション

マルシン初期のカートリッジ式オートマチックガスガン。樹脂製のカートリッジが付属し、発射とともにブローバックと排莢を行う画期的なモデルでした。
ガスタンクはグリップ内部のスペースをマガジンと取り合っているため小さく、動作のガス消費も激しめ。このためそうそう連射できるものではなく、実射性能はかなり低いものでしたが、ライブカートで排莢まで行うシステムはそんな欠点を補ってあまりある衝撃を界隈に与えました。
その機構ゆえに連射性も精度も犠牲になっている点はマルシン側も承知の上で、マニュアル曰く外部ソース化も可能なように設計されており、モデルによっては外部ソース関係の付属物を加えたセットも存在しています。
本体内蔵型ガスタンクの宿命として経年によるガス漏れが非常に多く、なおかつマガジン式に比べて修理が難しいため、ガスオペ系シリーズの完動品は年々貴重になっています。
②Cz75 6mmBB DUAL MAXI

BB弾の発射と同時に空になった薬莢をブローバック動作で排出する点はガスオペと同様。しかしこちらはガスタンクを本体ではなくマガジン側に内蔵しており、構造的な発展が見られます。
スペースを共有しているのは同じなので、ガス容量に関してそれほど変化はありませんが、マガジンが冷えた時に温めてガス圧力を回復させやすい利点があります。(ガス漏れを起こしやすいのは相変わらずですが…)
動作性は全体的にガスオペと比べて良くなっており、キビキビ反応してバシバシ排莢できる楽しいガスガンに進化しています。
軽量なカートリッジは想像よりも色んな所にポンポン飛んでいくので、紛失しやすい点には注意。本当に想像以上に紛失します… 今や本体ともどもカートリッジも入手しにくいので、なくした時のショックは計り知れません。
③Cz75 スーパーブローバック ステンレスフィニッシュ

こちらは上記2点とは違って、ガスガンではなくモデルガン。
モデルガンならライブカートなんて当たり前…というより、モデルガンにライブカートがどうだとか言うこと自体がナンセンスですが、スーパーブローバックについてはガスも関係があるのでご紹介。
普通のモデルガンは火薬を使って動作させますが、なんとこのモデル、ガスの力によってスライドを動かすという変わった機構を採用しています。火薬の発火+ガスのハイブリッド構造は現在まで見渡しても異端中の異端。
ガス動作の構造を組み込まれていることでリアルさが損なわれているという、モデルガンファンにはなかなか受け入れがたい特徴を持つスーパーブローバックは、Cz75で出たきりで後に続く系譜も登場していません。リアルでなんぼのモデルガンの中においては、さもありなんと言いますか…
とはいえ、こうしてガスオペと並べてみると似たような構造・似たようなコンセプトであり、できそうだったから試しにやってみた感が伝わってきます。そう思えば、マルシンの開発史的には見逃せない1本ではないでしょうか。
ロマンの塊「8mmBB弾」
エアソフトガンの弾としてメジャーなBB弾の直径は6mm。国内のみならず、海外製品もこの規格を前提にしているものがほとんどです。
しかしマルシンは、より大きく重い「8mmBB弾」を独自開発しています。6mmBB弾との差はたったの2mmですが、並べてみるとその違いがよくわかります。

このように全く違います。むしろこれで差が2mmしかないことに驚かされるほど。
6mmの場合は0.2gや0.25gがメジャーである一方、8mmは0.27g・0.34g・0.4gに至るまで、大きいぶん重め。弾速や飛距離は6mmに譲りますが、8mmはこの大きさと重さでターゲットに着弾した際の「ドスッ」という迫力を生んでいます。
大口径銃の銃口の迫力をリアルに再現することに全振りした、まさにロマン仕様のシリーズです。
①トグサの銃 マテバM-M2007 8mmBB HW

「攻殻機動隊」でトグサが使用している銃として、公式タイアップで製品化されたモデルです。普通のリボルバーと違い、シリンダーが本体上側へグルンとスイングするのが最大の特徴で、バレルも下側配置という超・個性派。
攻殻機動隊とのコラボの形での製品化は一度だけですが、マテバ自体は繰り返し製造され8mm・6mm両方の仕様が存在します。後にカートリッジの形状がよりリアルなフォルムの『Xカートリッジ』へと改良されるなど、人気の根強いモデルです。
マテバはエアソフトガンとしてはほぼマルシンでしか作られていないため、これぞマルシンを代表する製品の1つと言えます。
②グロック21 8mmBB DUAL MAXI

先述したライブカートシリーズの『DUAL MAXI』ですが、これはなんとそれに加えて8mmBB弾を使用できるモデル。ロマン要素とロマン要素を混ぜれば更に良くなるという、頭が良いんだか悪いんだかわからない製品です。
しかし迫力のある組み合わせであることは確かで、空薬莢を排出しながら8mmBB弾が飛んでいく様は圧巻。迫力に振ったモデルだということがよくわかる撃ち味で、ライブカートモデルとしても良好な動作性です。
カートをなくしやすい点はもちろん据え置きで、8mmBB弾の迫力に気を取られているとカートリッジが逃げていきます。このモデルはDUAL MAXIの中でも特に希少なモデルのひとつで、対応8mmBB弾用のカートリッジも然り。なくさないように神経を遣います。
今や発売からかなり時間が経ち、ガス漏れを起こしてしまっている個体も多いので、動作品を見つけられたらラッキー。
③M1 ガーランド ブローバックMAXI 8mmBB

長物にも8mmBB弾モデルは存在しており、中でもこのM1ガーランドについて語ることは避けられません。その特徴はなんといっても、ガーランドの独特なアクションである、カートクリップが排出される動作が再現されている点に尽きます。カートクリップはマガジンになっていて、残弾が0になると同時にピョンっと飛び出すようになっています。
ガーランドはガスガンとしての製品化がほぼマルシンでしか行われていないため、この排出アクションを体験するには必然的にマルシン一択となっています。中でも8mmBB弾仕様は6mmBB弾仕様と比べて再販の機会が少なく、年々希少になっています。
専用設計の8mmBB弾用カートクリップ型マガジンも、希少価値が上がり過ぎて発売当時と比べると信じられない値段で取引されています。撃ち尽くすと否応なく飛び出して地面に落ち、必然的に傷ついたり無くなったり… という性質も関係しているのかもしれません。魅力と表裏一体の欠点、ままならない…!
時代を先取りしすぎた?安全基準をクリアした「CO2ガスガン」
ガスガンはタンク内のガスによる圧力で動作しますが、温度の影響を受けやすいという弱点があります。温度が低いとガスの圧力も下がり、圧力が下がるとガスガンの動作性も落ちます。また物理現象として、ガスを放出するたびにタンク内のガスの温度は下がります。
つまり連続して発射するほどガスガンの動作性は悪くなり、更に冬場ともなれば満足に動かせないほど性能が落ちてしまいます。せっかく出来の良いガスガンがあっても、これでは気持ちよくなれません。

そこで注入型の液化ガスではなく、高圧のCO2(二酸化炭素)カートリッジを使用するのがCO2ガスガンです。一般的なガスガン用のガスと比べてCO2カートリッジは圧力が格段に安定していて、温度変化の影響も受けにくく、実射性能では通常のガスガンよりあらゆる点で優れています。
現代ではCO2ガスガンはひとつのジャンルとしてメジャーな地位を獲得しており、国内外を問わず多くの製品ラインナップで市場を賑わせています。
このCO2ガスガンを初めて本格的に製造・販売しジャンルとしての裾野を広げたのは、実はマルシン工業。厳しい安全基準をクリアして強烈なリコイルショックと安定した動作を実現し、CO2ガスガン界の世界的な先駆けとなりました。
爆発的なヒットを飛ばしたCO2ガスガンが市場を席捲し既存のガスガン全てに取って代わる……ということが起きたりはしなかったのが難しいところですが、マルシンが時代を先取りしていたのは確か。むしろCO2ガスガンが増えた今こそ、時代が追い付いてきたと言えるのかもしれません。
①FN ファイブセブン CO2 FDE

国内ではじめて本格的に販売されたCO2ガスガン。FN 5-7は東京マルイからも通常のフロンガス仕様が販売されていますが、それと比べるとパワーと安定感が段違いです。
一昔前はCO2ガスガンは気軽に選べる選択肢が少なく、マルシンからの販売は入門や普及に大きな役割を果たしてきたと言えるでしょう。
CO2 FN 5-7はひたすら擦り倒されていて、少しずつ改良されながら繰り返し再販されています。それだけに中古市場ではいろいろな状態の個体を目にすることができ、激戦を切り抜けてきたようなボロボロの個体も散見され、長く使われてきた歴史を感じさせてくれます。
②CDX306 ピストル CO2

マルシンCO2ガスハンドガンとしてはFN 5-7がとにかく代表的で有名ですが、他の機種もちらほら程度は存在します。このCDX306もそのひとつで、ブローバック機能のない固定スライドガスガンであるというのが最大の特徴。
そもそもブローバックはそれなりにガスを消耗する機構なので、それがないということは燃費がとても良いということ。1本のCO2カートリッジで200~300発は射撃可能という驚異の継戦能力は、まさしく射撃のみに特化し合理性を突き詰めた帰結と言えます。
しかし実は、この手の固定スライド型CO2ガスガンはそこまで人気がない傾向があるのも事実。系譜として根強いFN 5-7と比較して後継シリーズがないことからも、CO2に期待されているのは強烈なブローバックであるというユーザー心理がうかがえる一丁です。
③U.S. M1カービンEXB CO2 高級ブナストック

ハンドガンに多いCO2ガスガンですが、こうしたライフルにも取り入れられています。サイズは大きくなりましたがCO2ガスガンとしてのパワフルさは健在で、発射とともにボルトがバシバシ動く気持ち良さは格別です。
構造的にリコイルの感覚は手指の方に感じやすく、肩に感じたい勢からは残念という意見もいくらか。それでも動作性に優れ、木製ストックを採用したバリエーションは高級感もあり、好評を得ているシリーズです。
こうした銃に使うような木材は年々調達価格が上がっているようで、次に再販があったとしてその時一体いくらになるのか予想がつきません。再販を待っていると、その時にはとんでもない値段になっている…ということはよくあるので、もはや早く買うほど安いという状態。状態の良い中古品を見かけたら、確保しておくのが賢いかもしれません。
個性派揃い!まだまだありますマルシンの名作
ここまではマルシン独自の機構に絞ってきましたが、それ以外にも注目に値するものは盛りだくさん!そのうちのいくつかを、担当の独断と偏見でピックアップしてみました。
①44オートマグ クリント1 8mmBB maxi シルバーABS

手にするととにかくデカく、本体がデカいなら弾もデカくしたれと言わんばかりに8mmBB弾仕様として販売されたオートマグです。写真の商品は固定スライドモデルで、射撃の安定感がウリ。古い固定スライドモデルは個体によってはちょっと初速が出過ぎている場合があるので、そのあたりは要注意です。
②モーゼル Kar98K ブナ ダーク2ブラウン ブラックHW

マルシンで定番といえば98k!リアルなライブカート動作によって、ボルトアクションの楽しいところは全部楽しめる人気モデルです。木製ストックのバリエーションが多いのも特徴的なポイント。今後の再販に不安があるのは木製ストックモデルのサガ…
③UZI ウージー短機関銃 メタルストック

モデルガンとしては商品化自体が希少なウージーですが、その昔マルシンは金属モデルガンとして販売していました。部分的な材質やダブルカラムかシングルカラムかなど、時期により少しずつバリエーションの変遷がありますが、グリップフレームが金属製でダブルカラムのモデルがレアかつ人気。本体が重すぎて箱がボロボロになりやすく、箱まできれいなものとなると卒倒レベルの超絶希少品です。
④エンフィールド No.2 MkI ポリス エクセレントHW

銃が途中で割れるような姿と「3分間待ってやる!」でおなじみの中折れ式のリボルバー。マルシンにおけるエンフィールド販売の歴史はかなり古く、ごく初期からのメンツです。それでいて割と最近にも再販されるなど、根強い人気を保った古株。
ちなみにエクセレントHWとは、金属っぽい表面質感を再現したHWのこと。マルシン独自の名称です。
⑤コルト M1861 Navy カスター将軍のリボルバー

マルシンはこうした装飾銃のモデルガン化も手がけています。写真はフランクリンミントというコレクターズアイテムを販売している会社の名義での商品ですが、銃本体はマルシンが作っているといったパターンのものです。こういった別名義で中身はマルシンという商品は実は結構あるので、探してみるのも面白いかもしれません。
パーツ調達も安心!マルシン直販サイトを活用しよう
最近になってマルシン工業からは、KSCのような公式オンラインショップが開設されました。これにより公式からの直販の形で、ガスガンやモデルガンを購入できるように。
もっとも、マルシンの生産形態が他の多くのメーカーと同様、長めのスパンで再販(+改良)を繰り返すスタイルのため、公式ショップといえども常に全ての機種の在庫がある訳ではありません。
そこのところは、公式ショップ限定仕様の商品を中心に販売することで既存の販売ルートとは差別化が図られています。
このオンラインショップで特筆すべきところは、やはり細かいパーツを指定して直接購入できるようになったところでしょう。現行機種のパーツに限られるものの、破損や紛失によって必要になったパーツをピンポイントで購入可能なのは大きな強みとなっています。細かい補修パーツの入手性が上がったことは、中古市場的にはうれしい限り。
意識しておきたいのは、壊れたり交換が必要になるのは一部のパーツにどうしても偏ってしまうため、そうしたものの在庫はなくなりやすいという点。探し物がある場合はまめにチェックするのが吉でしょう。
まとめ
いかがでしたか?
今回紹介した製品はどれも、筆者がいろいろな中古品に実際に触れてきた中で、印象的に感じられたものばかり。他で見られない意欲作を世に出し、そのノウハウを活用し、強みとして定着させる。それこそがマルシンの魅力に直結した生存戦略なのです。
物価高騰や人手不足といった時事のあおりを受け、最近では残念ながら開発中止となった製品もいくつかありましたが… それでも、マルシンの歩みは止まってはいません。
マルシン工業の未来の展開に期待を寄せながら、中古屋としては過去の製品にも目を向け今後も大いにおもしろがっていきたいと思います!
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