
日本でモデルガンの歴史を作ったのは、伝説的メーカーにしてパイオニアのMGCであった… というお話を以前の記事でさせていただいたところです。これと似た話で、ガスブローバックというジャンルに目を移せば、これまた偉大すぎる功績を残しているメーカーが存在しています。
それこそが「ウエスタンアームズ(WA)」!
ガスブローバックを語るにあたって外せない「マグナブローバック」を作り上げた彼らに焦点を当てて、今回は解説をしていきたいと思います。
WAとは?業界に革命を起こしたレジェンドメーカー
WAは東京都渋谷区に拠点を置くメーカーで、1993年に設立されました。代表の国本圭一氏は、若かりし頃アメリカでの修練を経て拳銃に精通し、関連興行にも数多く関わっていたというスゴイ人。
そんな経歴から培った国本氏の「銃」に対する知識と感性とこだわりが、そのままWAというメーカーの根本的な指針となっています。それはすなわち、銃としてのリアルさの追求。
実銃メーカーとのライセンス契約によって刻印からなにからバッチリ再現し、それ以外にもトイガンとして可能な部分は妥協せずリアルに近付けていく… そんなスタンスが、初期の初期から一貫していました。
まぁベレッタ社とはそのあたりの刻印のこととかで大変ゴタゴタしてしまったのですが… この話は1記事になりうるほど【濃い】ので今回は割愛。



90年代といえば、既にモデルガンを中心に色々と法規制が課されてきた頃です。度重なる法整備を経てトイガンには構造的な制約があるわけなのですが、その中においてどのように銃としてリアルな表現をするのか? 独自の技術力・設計力を持っていたWAがこの命題に向き合った時、誕生したのが次項の革命機構「マグナブローバック」でした。
トイガン史を揺るがした歴史的発明「マグナブローバック」
①マグナ以前のガスブローバック
前提として、マグナブローバック登場以前にもブローバック機能を持ったガスガン自体は存在していました。なにしろ実銃がそういう動きをするのだから、それを再現しようというのは自然な流れ。モデルガンの時に、MGCがブローバック式モデルガンを実現しようとしたのと同じですね。

しかしながら、マグナ以前のものは「ブローバックの再現」に重点が置かれすぎていたのか、機構的には全くリアルな感じはしないし、性能もよくありませんでした。
これはメカニズム的な制約。例えば弾の発射とブローバックがほとんど同時に起きることで、銃身がブレたうえでBB弾が発射される…ような感じだったのです。人間が静かに落ち着いて狙いをつけていても、肝心の銃の方が暴れながら弾を発射したら、狙った所に当たりはしないわけです。

あるいはマルシン製ガスオペガバメントのような、発射とブローバックが別々のメカニズムになっていて、トリガーを引き絞る過程で順番に開放されていくという仕組みのものも。
こちらは今見るとトリガーストロークが独特で、ぐぐ~~っと思ったより引き絞らないとうまく動きません。構造も複雑になってしまい、リアルかというと難があったわけです。
こうしたことがあるので、当時は「撃ちたければガスガン・リアル志向はモデルガン」みたいな風に方向性がかなり分かれていました。ある意味、ハッキリと棲み分けされていた時代だったとも言えます。そう、マグナブローバックの登場までは。
②現在も続くガスブローバックの原点

1993年末にWAが発売したのが「ベレッタ M92FS」。この商品が非常に画期的なガスブローバックエンジンを搭載していて、それが後に一般公募によって「マグナブローバック」と命名されるシステムです。

マグナはそれ以前のブローバックと異なり、ガスの放出ルートを動作の途中でうまく切り替えることで、BB弾発射→スライド後退という順番で確実に動作させることができました。
この切り替えを行っているのが、フローティングバルブという小さなパーツ。これとスプリングの組み合わせで、BB弾の発射直後にブローバック側にガスルートを切り替えるメカニズムが成立しています。
これによって、BB弾はリコイルによってブレる前にバレルを抜けて発射されていることになります。つまりスライド後退のギミックが射線に影響を与えることがないため、高い精度を実現できたのです。それでいてブローバックもしっかり強烈。リコイル・信頼性・精密性どれを取っても非常に完成度が高かったため、瞬く間にガンマニアの熱烈な支持を勝ち取りました。


しかも発射→ブローバックという動作順だけでなく、動作としてのニュアンスも、内部メカの配置そのものも、かなり実銃に近いものです。主要なメカニズムのだいたいはスライドのわずかなスペース内に集約されていて、フレームに至ってはもうほとんどモデルガンと言っていいほど近い構造。

マグナ以前のものとしては非常に完成度の高いMGC製グロック17でさえも、ホールドオープン状態のチャンバー内はぎっしりメカで埋まっています。

一方マグナは、チャンバー内には実銃の構造を意識して、しっかり空間が取られています。目につく部分であるだけに、この点ひとつ取っても違いは歴然。
マグナ以前のガスガンはこうした構造を持つことができず、リアル志向の需要は専らモデルガンの領分でした。そこのところマグナブローバックはリアルな構造と精密な射撃性能を両立させたことで、相反していたはずの2つの需要をまとめて吸収することができたのです。
どちらにも響くならそれはもう強いはずで、マグナはそれ以前のブローバックモデルを一気に過去のモノにしてしまいました。
③業界への影響
M92FSを皮切りに、その後もマグナブローバック搭載モデルを次々と発売していくWA。その完成度が圧倒的であっただけに、この分野に関して他のメーカーは相当に遅れを取った形となりました。
マグナブローバックは発射の楽しみもリアル志向も満たし、時代の流れを加速させました。そのアオリをもろに受けてしまっていたのがモデルガンで、その中心にいた老舗・MGCもまたかなりの苦境に立たされていました。
モデルガン下火の時代の潮流を受けてガスガンの製作も行うようになったMGCでしたが、ここで彼らはWAと接触。MGCはWAから技術提供を受けることになり、こうしてマグナブローバックを搭載したMGC製ガスガンが誕生したのです。

このあたりの細かい経緯は推して知るべしといったところですが、業界大ベテランの老舗メーカーが新興・WAの力を認めて手を取り合おうとしたと思うと、なんだか胸熱な話です。結果誕生したMGC製ガスブローバックも、隠れた名機が多いです。
また、似た経緯でタナカもマグナ搭載ガスブロを発売しています。マグナがあっという間に市場を席捲していったことがうかがえる流れです。
マグナ以後は、東京マルイやKSCといったメーカーからも、リアルな構造のガスブローバックが生まれています。ですがこれらも構造面ではマグナブローバックから影響を受けているところが非常に大きく、多少の差異はあれど基本は似通っています。
ガスブローバックにおけるリアルな構造を突き詰めると、おのずと近い構造になる…というと、収斂進化的な側面も感じる話。
マグナブローバックの方も、細かい改良を重ねられながらも基礎は同じ構造のものが今日までずっと作り続けられてきています。パイオニアが作り上げた構造が、業界全体の製品の下地になっている… これはまるでMGCの記事で紹介したモデルガンの発火方式の話のようで、非常に面白いなぁと思うわけです。私は。
まぁマルイの電動ガンでもそうなので、そういうものなのでしょう…特に海外のトイガンは、国内品のパk… 参考にしたものが多いですしね。
ちなみにMGCの話については、以下の記事で解説しています。
リアルさの極致!WAならではの「質感」と「重厚感」へのこだわり
ここまでマグナブローバックのことばかりお話してきましたが、なにもそれだけがWAの良さではありません。WAの製品は動かさなくても魅力的です。なぜなら、質感と重厚感が最高だから!
昨今のWA製品はほぼ、HW(ヘビーウェイト)樹脂でできています。一般的に樹脂に金属粉を混ぜ込んだアレですが、WAのそれは完成度が抜きんでていて、その名を「カーボンブラックHW」。これは樹脂でありながらまるで金属のような冷たさと重さを誇る、まさに夢の素材です。
※金属粒子の含有量が多いので酸化で変色しやすいとか、製造時期やモデルによってはスライドがハの字に広がってフレームとの嚙み合わせが変わっちゃうことがあるとか、欠点もなくはない。

このおかげでWA製品は他のメーカーの製品と比べて、持った感覚がかなりズッシリしています。
そのくせブローバックの動作性がすこぶる良いので、重いはずのスライドを低温でもバシバシ動かせてしまいます。なにせ質量が激しく動くわけですから、感じられるリコイルショックは業界随一というわけです。
昨今はCO2のようなメカニズムもありますが、あちらはあくまで動力の強さと安定感。WAのような、重いスライドが動いている感覚によって得られる満足感は、他で味わいがたい感じがします。
そしてCBHWとセットで施されるのが、職人の手作業によるさまざまな仕上げ。
バトルダメージ加工やヴィンテージ加工のようなウェザリングや、マット加工、ポリッシュ、黒染め…etc.。商品ごとのコンセプトに沿ってこうした処理を組み合わせ、金属のような外観と質感が表現されます。

ウェザリング系の加工を実際に見るとわかりやすいのですが、樹脂系素材とはにわかには信じがたい表面処理具合です。この見た目のものが実際にズッシリしているので、本当に銃を持っているかのような感覚を味わえてしまうのです。
実際に銃に触れてきた代表・国本圭一氏が、それに近付けようと信念を持って取り組んできた結果が、このリアルさに結実していると言えるでしょう。
【プロ目線で厳選】コレクターを魅了するWA代表作
WA製品にも、魅力的かつ個性的なモデルがたくさんあります。 …というか性質上、商品それぞれそんなに多く作られず、再販も非常に限られていて、広く浅くといった感じの販売スタイルなのがWA。だからこういうご紹介には事欠きません! 本日はいつもより少し多めにやって参ります!
T2 サラコナー・カスタム

かの名作「ターミネーター2」でサラ・コナーによって使用されたプロップガンのスタイルを再現したモデル。WAではこういう映画が元ネタのモデルアップが多く、その映画が好きな人からすると垂涎の一品です。
もちろん完成度も高く、アルミ削り出しのバレルウェイトで特徴的なロングシルエットはかなり印象に残ります。
ガバメント 《緋弾のアリア》モデル


映画があればアニメもあり! こちらは2011年のTVアニメ「緋弾のアリア」にて、アリアが使用するカスタム・ガバメントですが、左右それぞれの色違いがきちんと個別にモデルアップされています。各部のディテールの再現もさることながら、トリガーコントロールでセミオート/フルオートを撃ち分けられる設定通りのギミックも組み込まれています。
ガワの再現だけにとどまらないあたり、WAが何かにつけてこだわり集団だということが伝わってきます。
デザートイーグル.44マグナム

WAの箱で、茶色段ボールにロゴ入りのシンプルなデザインではない場合、特別なコラボモデルか、でなければ古い製品が多いです。例えばこのデザートイーグルは、マグナではあるものの系列品は現行ラインナップには存在しません。いい銃なんですが、ガス漏れを起こしやすいといった欠点もあり、ことデザートイーグルに関してはマルイ製品に分がある気がします。
WAも色々試した結果として、ガバメントやベレッタの系列に集中することにした…といった歴史を感じさせる1本です。
ベレッタ M1934

意外にも、WAはモデルガンも作っていました。これは先述のMGCと提携して製品を作っていた時代のもの。MGCがマグナブローバックを使わせてもらうだけの関係ではなかったことが伝わってきますね。何気にM1934もモデルアップの貴重な機種なので、今欲しいと思ったらほぼコレ一択。古い製品だというのもあり、結構レアものです。
コブラ ヤティマチック/Jatimatic

そろそろやっておきたいイロモノ枠。いちおう映画系のモデルでもあります。
その昔いくつか見られた、ガスバルブを電動モーターで叩くことでフルオート射撃を行う、ガスガンであり電動ガンでもあるというもの。電動側の動力は乾電池で、マガジン内にセットするのですが…液漏れで端子が使えなくなったり、マガジンが強度不足で破損しやすかったりと、ちょっと機構的な無理がたたって問題も多かったりします。
なのでちゃんと動く個体となると超スーパー激レア。なおかつ、唯一無二のモデルアップすぎて未だに人気も需要もあるんです。まず新しく作られることのないモデルですから、探すとなると相当骨が折れる… まさに不思議な魅力を持ったモデルです。
IMI ミニ・ウージー サイレンサーモデル

これも今のラインナップにはない、「実はあった」枠。ウージーのガスガンは国内品だと珍しいので、人気のあるモデルです。金属パーツの採用が多いので、とにかく重い重い。小柄ながら2kgを超えています。動作も迫力があり、サイレンサーとガンケースもついていてお得。これも需要の高いビンテージ品です。
コルト スネークマッチ1911 / カーボンブラック HWVer.

スネェェェェェェク! が、使ったモデルもあります。片面のグリップパネルに大きく窪みが入っているのが特徴的。窪みの用途は言わずもがな、ここにナイフの柄を添えて銃と一緒に構え、至近距離でのナイフファイトに即座に移行できる形にするため。CQCの基本です。
こういうモデルはコレクションはもちろん、ガチなコスプレをする人にも需要があります。マルイのコラボ系とはまた違った路線で組んでくれるのが、WAの嬉しいところ。
ゴルゴ13 M16 スナイパー・ライフル

コラボ系ばかり紹介してしまいますが、こちらはゴルゴ13と組んだガスブロ長物、M16の狙撃仕様です。M16がそもそも狙撃向きではないというツッコミは公式側も認識しつつ、それでもそれっぽく作るのいうのがまた作品愛。WAは長物の動作性もバッチリで、ハンドガンとはまた違った感覚のリコイルショックは癖になります。高級感のあるアタッシュケースと、ポスターや解説書といった数々の特典もあり、満足度の高い1本です。
ケースがデカい&重いので運ぶのが大変ですが、愛というものはいつだって重いもの。
1056 コンバット・コマンダー シルバー 世田谷ベース・モデル

頭の謎の数字は「1056(トコロ)」。所ジョージ氏が直々に監修したコンバット・コマンダーです。WAは芸能人ともコラボする! 高級感のある落ち着いたシルバー外装は美しく、刻印は彫刻機でしっかりばっちり刻まれた世田谷ベースマーク&所ジョージ氏直筆の逆さ福! 個性的かつセンスの良いセッティングで人気のモデルです。
コルト BOB CHOW ver.1.5 ビンテージエディション

伝説的ガンスミスのボブ・チャウ氏によるカスタムガバメントはずーっと人気、引く手あまたです。ボブチャウはWA製品にしては再販やバージョンアップが多めの部類で、これは改良版の仕上げバリエーションのひとつ。
お家芸であるビンテージ処理が各部の角を落とした加工によってすごく際立っていて、使い込んだ感がこれでもかと表現されています。実際に手に取って、触って、いろんな角度から眺めることで、メッチャ満たされる類のモデルです。
少量限定生産だから資産価値が高い!WA製品の高価買取は当店へ
紹介の中でちょくちょく言及していたことがあります。
それはWAの製品販売スタイル。とにかく1モデルあたりの生産数が少ないのです。これは人手を介して行う工程が多い以上は無理からぬこと。新品の販売経路もWA公式の直販のみで、卸販売は行っていません。
供給の量も経路も限られている。それでいて完成度の高さから唯一無二の需要と人気がある。
そうなると絶版品や過去モデルの価値は下がりにくく、モデルによってはむしろ時とともに上がっていくことさえあります。
私共ミリタリーグッズ.COMは、長い運営期間の中で数多くのWA製品に触れてきました。
こうした経験と蓄積が、細かいエンジンや仕上げの違いを正しく評価する源泉になっています。
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